鳥籠ノ砂

籠原スナヲのブログ。本、映画、音楽の感想や考えたことなどをつらつらと。たまに告知もします。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

綾辻行人と本格ミステリの倫理――『十角館』『時計館』『アナザー』

綾辻行人は、一般的に新本格ムーブメントの旗手として知られている。そして、本人もその役割を積極的に引き受けてきたように思われる。たとえば彼は、デビュー作『十角館の殺人』において、次のようなセリフを書いている。 「僕にとって推理小説は、あくまで…

被選択の排除――『ロボティックス・ノーツ』のためのノート

前回のおさらい 『カオスヘッド』の物語には、「選ばれること」はあっても「選ぶこと」がない。たしかに、主人公である西條拓巳は、咲畑梨深に承認されるか否かをめぐって苦悩する。しかし、たとえば梨深と優愛のどちらを愛すべきか、梨深と七海のどちらを助…

これは「母性」ではない。――『おおかみこどもの雨と雪』論

雨と雪について 雨と雪は、どちらも成長するにつれて「狼」と「人」のあいだで苦悩する。だが、その結末はきわめて対照的である。雨は「狼」として動物たちに融け込み、雪は「人」として学校に慣れ親しんでいった。この対比は単なるおとぎ話ではなく、もう少…