鳥籠ノ砂

籠原スナヲのブログ。本、映画、音楽の感想や考えたことなどをつらつらと。たまに告知もします。

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ネット社会に「闇」はあるか? ――平野啓一郎『決壊』について

「しかし、彼がそこからどうしても逃れられないのは、彼の知る他者が、現実の他者と少しも矛盾しないように感ぜられることだった」 平野啓一郎『決壊』(2008)の主眼は、その紹介文によれば「絶望的な事件を描いて読む者に〈幸福〉と〈哀しみ〉の意味を…

文化と政治の植民地 ――エドワード・サイード『オリエンタリズム』感想(上)

エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』(1978)は、オリエンタリズムの理論とポストコロニアル理論を確立した書物である。簡単に言えば……オリエンタリズムとは、アジアや中東への誤解とロマンティシズムに満ちたイメージの領域であり、ポストコ…

美しい飛翔の夢想、醜い戦争の現実 ――宮崎駿『風立ちぬ』について

宮崎駿『風立ちぬ』が描く「飛行機」の表象は、美しい夢想と醜い現実の二律背反に置かれている。たとえば、カプローニとカストルプの対比を見てみよう。カプローニは世界的に著名な飛行機製作者のイタリア人であり、しばしば堀越二郎の夢のなかに現れる。そ…