鳥籠ノ砂

籠原スナヲのブログ。本、映画、音楽の感想や考えたことなどをつらつらと。たまに告知もします。

2013-01-01から1年間の記事一覧

ネグリ+ハート『マルチチュード』について ――ドゥルーズ+ガタリとのスタイルの差異など

アントニオ・ネグリ+マイケル+ハート『マルチチュード――〈帝国〉時代の戦争と民主主義』(2004)は、『〈帝国〉――グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』(2000)の続編である。そもそも『〈帝国〉』は、グローバリゼーションに伴って…

アイドルとファンの垣根を越えて。 ――TVアニメ『ラブライブ!』論

TVアニメ『ラブライブ!』は、音ノ木坂学院の生徒である高坂穂乃果たちが、スクールアイドルとして活動する学園ドラマである。そもそも『ラブライブ!』とは、架空のスクールアイドル「μ’s」の日常や物語を雑誌上で展開しつつ、PV付きの楽曲を販売すると…

ボカロ時評2013年3月現在 ――くるりんご、椎名もた、じーざすP、みきとP

① くるりんご『幸福な少年』(PV:くるりんご) http://www.nicovideo.jp/watch/sm20184946 3rdアルバムから発表された『幸福な少年』は、初のデジタルなイラストレーションや「語り」の導入等によって、くるりんごにとって新しい局面を見せる作品とな…

【文学フリマ】 「ウェブニタス」「『青い花』評論集」「『たまこま』評論集」に寄稿しました。

4月14日(日)の文学フリマ in 大阪、および28日(日)の超文学フリマ in ニコニコ超会議に参加することになりました。 ① 土塊(@dokai3)氏編集の評論系同人誌「ウェブニタス」に、文章を書かせて頂きました。タイトルは、「彼女は虚構に回帰する。――…

「人それぞれだよ」がダメな理由――井上達夫『世界正義論』感想

井上達夫『世界正義論』は一言で言えば、「国境を越え、覇権を裁く正義」としての世界正義を追求する書物である。それゆえ、彼は「正義は国境を越えられない」という立場と「正義は身勝手に国境を超える覇権的なものでしかない」という立場を共に乗り越えな…

誘惑する哲学者 ――柄谷行人『哲学の起源』感想

古代ギリシアの統治形態とそれに類似した現代思想。 ①僭主政。不自由かつ不平等。→ファシズム。 ②デモクラシー。自由だが不平等。→アーレントおよびポパー(説得)。 ③哲人王。不自由だが平等。→レーニン主義。 ④イソノミア。自由かつ平等。→フロイトおよび…

ボカロ良曲の紹介と感想 ――2013年2月現在『ダンスダンスデカダンス』『コインロッカーベイビー』『夜咄ディセイブ』『純情スカート』

① カラスヤサボウ『ダンスダンスデカダンス』(PV:紫槻さやか) http://www.nicovideo.jp/watch/sm19940497 前々作『文学少女インセイン』の続編として制作されたらしき楽曲。教科書レベルの偉人を使い捨てる露悪的な歌詞は、そのまま「世界の中身はナン…

現在と過去、そして病 ――TVアニメ『中二病でも恋がしたい!』論

TVアニメ『中二病でも恋がしたい!』は、むかし中二病を患っていた主人公・富樫勇太が、今も中二病のヒロイン・小鳥遊立花と結ばれるまでを描く恋愛劇である。そしてまた、主人公と同じく元・中二病の丹生谷森夏と、ヒロインと同じく現・中二病の凸守早苗…

議論しない哲学者 ――ドゥルーズ+ガタリ『哲学とは何か』感想

ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリ最後の共著であり、その思想の総決算とも呼ぶべき『哲学とは何か』(1991)は、タイトルが示すとおり、「そもそも、ドゥルーズとガタリは哲学をどのように捉えていたのか」について教えてくれる。一言で言うとす…

ボカロ良曲の紹介と感想 ――2013年1月『アンダンテ』『16ビットガール』『エレクトロサチュレイタ』『Don't pop me』『Q』

① Dixie Flatline『アンダンテ』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm19639179 初音ミクの「里帰り」を描く Vocaloid イメージソング。タイトルには、「大きなうねりの中でも方角を見失わないように。心は常にアンダンテ(歩くような速さで)で」という Dixie …

説得しない哲学者 ――國分功一郎『スピノザの方法』感想

國分功一郎『スピノザの方法』はデカルトの思想とスピノザの思想を対比した上で、ある驚くべきテーゼを発見している。デカルトの思想が他者への説得を試みるのに対し、スピノザの思想は他者への説得を試みない、というのだ。 本書の問いは、人はいかにして真…

全体への道、個への道 ――TVアニメ『アイドルマスター』論

「961プロダクション」の社長である黒井崇男は、「765プロダクション」の社長である高木順一朗に「負けを認めたわけではない」と吐き捨てて去っていく。これが単なる遠吠えではないとすれば、いったい物語終盤のどこに彼の勝機があったのだろうか? T…

どちらが終焉したのか? ――スラヴォイ・ジジェク『ポストモダンの共産主義』感想

スラヴォイ・ジジェク『ポストモダンの共産主義』(2009)には、「はじめは悲劇として、二度めは笑劇として」というサブタイトルが冠せられている。ここで言われる悲劇とは2001年の9.11同時多発テロのことであり、笑劇とは2008年の金融大崩…

このボカロ曲がすごい! ――2012年版

2012年にニコニコ動画で発表されたボーカロイド楽曲のうち、個人的に素晴らしいと感じた10曲+α を挙げていきます(順不同&敬称略)。 ①ATOLS『呼吸』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm19570828 ②ねこぼーろ『哀傷歌コンテキスト』 http://www.…