村上裕一『ネトウヨ化する日本』(2014)は、ネトウヨの本質を「ネット社会の暴走」と「セカイ系決断主義」に求めている。ネトウヨ現象は、ネット時代の「新中間大衆=フロート」が互いに空気を読み合いすぎること、すなわち互いに共感しすぎることによ…
柄谷行人『遊動論 ――柳田国男と山人』(2014)は、私たちの遊動性(=ノマドロジー)を大きく二種類に区別している。ひとつ目は定住革命以後の遊牧民のそれであり、ふたつ目は定住革命以前の遊動的狩猟採集民のそれである。柄谷行人によれば、前者は80…
濱野智史『アーキテクチャの生態系 ――情報環境はいかに設計されてきたか』(NTT出版、2008)は、アーキテクチャ(≒情報環境)の設計を生態系になぞらえて著述していく書物である。本書は時系列に沿いながら、インターネットという巨大なプラットフォ…
電ポルP「スキスキ絶頂症」 http://www.nicovideo.jp/watch/sm22879165 ピノキオP「それぞれに人生がある」 http://www.nicovideo.jp/watch/sm22748403 tilt「プラスチックボイス」 http://www.nicovideo.jp/watch/sm22648333 なぎ「clock work」 http://w…
TVアニメ『ガッチャマン クラウズ』(2013)は、言わずと知れた『科学忍者隊ガッチャマン』の長編TVシリーズ最新作である。しかし、本作は『科学忍者隊ガッチャマン』『科学忍者隊ガッチャマンⅡ』『科学忍者隊ガッチャマンF』の三部作(1972~…
不正確なノートその1 マルティン・ハイデガー『存在と時間』は「存在者」と「存在」を区別した。存在者が経験的な領野において人や物として個別的かつ具体的に存在しているのに対し、存在は超越論的な観念の領野において人や物を統合的かつ抽象的に規定して…
東浩紀『セカイからもっと近くに』(2013)は「著者最初にして最後の、まったく新しい文芸評論」として書かれた。このことは翻って、エッセイ集などを除く東浩紀の著作には「文芸評論」が存在しなかったこと、すなわち文学的作品それ自体を対象にした批…
……被害の事実を誇張することで自身の加害の事実を「なかった」ことにする姑息な被害者意識、加害者としての自己を他者に投影した上で他者を攻撃する臆病な雄々しさに身を委ねてはならない。確固たる加害者を自己に発見する勇気を、まずは、自己のうちに育て…
黒瀬陽平『情報社会の情念 ――クリエイティブの条件を問う』(2013)は、私にとっては今ひとつピンと来ない美術批評だ。タイトル通り、情報社会におけるクリエイティブの条件を「情念」などの概念から説明する本書は、しかし著者が警戒する「情報社会の球…
藤田直哉『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』(2013)は、筒井康隆の必要性を証明しながら二つの理論「超虚構理論」「虚構内存在」を描画し、2010年代における新たなる生の次元を開拓している。教育と進歩がもたらした破壊と、メディア…
①ATOLS『プリセット』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21868513 ②task『明けない夜を壊せ』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm19806841 ③じーざすP『しんでしまうとはなさけない!』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm20331479 ④sasakure.UK『ツギハ…
山川賢一は新進気鋭の文芸批評家として、これまでに三つの単著『成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論』(2011)『Mの迷宮 『輪るピングドラム』論』(2012)『エ/ヱヴァ考』(2012)を上梓してきた。全て近年話題になったオリジナルアニ…
柄谷行人『柳田国男論』(2013)には、1974年と1986年に発表された三本の柳田国男論が収録されており、その作家論的位置付けについては初出の「序文」(2013)で詳細に語られている。特に「柳田国男試論」(1974)に関しては、かの『マ…
保坂和志『未明の闘争』(2013)には「文学の定型的思考を打ち破る」という惹句が寄せられている。とはいえ私の考えでは、本作の醍醐味は決して文学の定型的思考を打ち破ったことではなく……なにかを打ち破る、という発想自体が既に定型的である……定型的…
千葉雅也は『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(2013)のなかで、ジル・ドゥルーズを「接続的ドゥルーズ」と「切断的ドゥルーズ」に分けている。フェリックス・ガタリとの共著『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』などが…
こんばんわ、籠原スナヲです。 12月29日(日)から31日(火)の冬のコミックマーケットに参加することになりました。 ① アニメ・マンガ評論刊行会の『アニバタ 特集:魔法少女まどか☆マギカ』に文章を書かせて頂きます。ブログでの記事を下敷きに、T…
はじめに 劇場で『叛逆の物語』を見終えたとき、ようやく私はTV版の結末に感じたモヤモヤを晴らすことができた。足りないパズルのピースがやっと埋まってスッキリした、この物語を私はずっと待っていたのだ、と。 TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(2…
はじめに なぜ、私たちは時として自他の不幸を望んでしまうのか。どうすれば、自他の幸福を望むことができるようになるのか。 虚淵玄は、株式会社ニトロプラスの取締役かつシナリオライターである。同社のデビュー作『Phantom』を手がけたのち『吸血殲鬼ヴェ…
「……遠すぎるよ、お兄ちゃんの……みんなのいる所。あたしじゃそこまで、行けないよ」――リーファ 川原礫『ソードアート・オンライン』は2002年からネット上で発表されていたオンラインノベルであり、同時に、2009年から電撃文庫で刊行されているライト…
ここまで『デリダ論』『文化としての他者』『サバルタンは語ることができるか』を概観しながら、ガヤトリ・C・スピヴァクの思想がどのようなものかを追ってきた。彼女はジャック・デリダから受け取った「抹消の下に置く」身振りを、言説の暴力性や偏向性を…
「そういう話がしたいなら評論を書けばいいんじゃないかしら?」――菖蒲みずき 大澤信亮『新世紀神曲』(新潮社、2013)の表題作は、批評としては少し型破りなスタイルを採用している。最近の現代日本小説の主要登場人物を使って、ある種の対話篇を書こう…
こんばんわ、籠原スナヲです。 2013年11月4日(月)の文学フリマで頒布される『アニバタ vol.6』に、拙稿を載せて頂きました。TVアニメ『Free!』について論じています。 公式はこちら:http://www.hyoron.org/anibata6 続報は追ってお知らせします…
① ATOLS『プリセット』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21868513 ② カラスヤサボウ『ジャスティファイドジェノサイド』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21482257 ③ niki『パラノイド』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21604528 ④ MATERU『脳内革命ガー…
「しかし、彼がそこからどうしても逃れられないのは、彼の知る他者が、現実の他者と少しも矛盾しないように感ぜられることだった」 平野啓一郎『決壊』(2008)の主眼は、その紹介文によれば「絶望的な事件を描いて読む者に〈幸福〉と〈哀しみ〉の意味を…
エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』(1978)は、オリエンタリズムの理論とポストコロニアル理論を確立した書物である。簡単に言えば……オリエンタリズムとは、アジアや中東への誤解とロマンティシズムに満ちたイメージの領域であり、ポストコ…
宮崎駿『風立ちぬ』が描く「飛行機」の表象は、美しい夢想と醜い現実の二律背反に置かれている。たとえば、カプローニとカストルプの対比を見てみよう。カプローニは世界的に著名な飛行機製作者のイタリア人であり、しばしば堀越二郎の夢のなかに現れる。そ…
TVアニメ『Angel Beats!』(以下『AB』)は、2010年に放送されたオリジナル作品である。小説、漫画、4コマ漫画などの関連作品がつくられ、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査委員会推薦作品に選ばれている。その主題は、原作・脚本を務…
スピヴァクがジャック・デリダ『グラマトロジーについて』の英訳序文を書くことで受け取った最大のものは、彼の「抹消の下に置く」身振りだった。その身振りは『文化としての他者』において、言説が孕む暴力性と偏向性を暴き立てるギリギリの綱渡りを可能に…
こんにちは、籠原スナヲです。 2013年6月から7月にかけて聴いたボーカロイドオリジナル曲のなかで、個人的に素敵だなと感じたものをまとめました。 ① みきとP+keeno『kiss』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21011936 ② sasakure.UK『ツギハギエデ…
こんにちは、籠原スナヲです。 2013年8月10日~12日に開催されるコミックマーケット、および8月18日のコミティアにて頒布される評論集『アニバタ vol.5 特集:P.A.WORKS②作品論編』に拙稿を載せて頂きました。ちなみに、私はTVアニメ『花咲く…